【教育の専門家】小倉 恵理

ーピアノを続ける事ができた理由は何だったと思いますか

一つは，初めて通い始めた教室の先生との相性がとてもよかった事だと思います。

習い始めて１週間で１冊の教本を終えることが出来，どんどん自分の頑張った分だけ進めていく事がとても楽しかったことを覚えています。

もう一つは，私がピアノを好きだと知った両親がピアニストの名曲集CDを沢山買ってくれた事です。とても嬉しくて，朝から晩まで聞き，自分でも弾いてみたいと思うような素敵な数多くの曲と出会いました。

ーピアニストを目指したきっかけを教えていただけますか

明確に「ピアノの道に進もう」と決意したのは小学校高学年の時です。

中学校時代には，既に音楽大学の受験を視野に入れていました。

ー挫折体験はありますか？

実は私は手の小指に手足の先天異常の一つである短指症をかかえています。日常生活には支障が出ませんが，小指の成長が無く、指に力が入りにくいため，とてもピアノに不向きです。現在日本で活動を行うピアニストで短指症は私くらいなのでは…。

ピアニストを目指し始めたばかりの中学時代，小指の骨がない部分を他の筋肉で補った事が原因となり，手の甲が腫れ，小指以外の筋肉に炎症が起きました。その結果，ピアノを演奏する事にドクターストップがかかり，手術を勧められました。

ただ，手術をする事でピアノの演奏という面においては支障をきたす可能性も高く，それならば「私はこの指を活かして今を乗り越えてみせる」と強く思いました。

その時から，筋肉を鍛える事を意識して練習を行い，生まれ持ったこの指と向き合っています。

ープロのピアニストとなり感じたことはありますか。

昭和音楽大学　ピアノ演奏家コースを首席で卒業し，プロのピアニストとしてデビューした後は，主に国内・海外で幅広く活動を行っていました。

海外での活動生活の中で私が感じた事は，習い事を始めとした海外と日本の幼児教育の違いです。海外では「３歳までの時間に一生分の学費をかける」という教育の考え方があり，幼児教育は「子どもの才能を伸ばすためのもの」で，脳への刺激の一つとされている事を知りました。 また，自分自身が短指症と向き合う事で目標であったプロのピアニストになる事が出来た事から，何かをこれから挑戦したいと思う人には「諦めなければ道が開ける」という事を伝えていきたいという気持ちも強く持つようになりました。

ー音楽教室を開校したきっかけは何ですか？

プロになった事で，諦めない姿勢で活動をする自分の背中を見せながらその事を子ども達にピアノのレッスンを通して教えていきたいという新たな目標が生まれました。

また，楽しい事・好きな事を見つけるきっかけになれればと思いました。

そしてもう一つ，

「自分が恩返しをしたいと思った時には，下の世代へ返していく事」という両親からの言葉でした。

ーかのん音楽教室はどのような教室を目指していますか？

私はプロのピアニストが次世代のプロを育成する教室ではなく，子どもがピアノをやった事がその子自身の人生で何かひとつだけでもプラスになれば良いという思いで開校しました。日本はまだ学歴社会であり，子どもはミスや失敗に弱いように私は感じています。

なので，ピアノを通して【達成感・本番に強くなる・自分の気持ちを自分で伝える力をつける・楽しめる事をみつける】そのような経験に繋がっていって欲しいと思います。

また，「ピアノを教えるだけに留まらずに総合教育に繋げていきたい」という目標と共に，私自身も弾くことをやめない講師を目指しています。